生理(月経)について
思春期以降の女性は、およそ一か月毎に卵巣から卵子を排卵し、妊娠に備えます。そして、成立しなければ子宮の内膜が出血に伴ってはがれてきます。この現象が生理です。
明治時代の女性の生涯経験する生理の回数は約50回であるのに対し、現代女性は450~500回と推測されています。これは、生涯における妊娠、出産、授乳の期間が激減しているためです。この生涯の生理の回数、そして排卵回数の多さが現代の医学的・社会的に問題となっている生理痛や月経前症候群(PMS)に直結しています。
月経前症候群(PMS)
生理の3~10日前から以下のような症状が始まり、生理が来るとだんだん治まってくる色々な症状の出現を月経前症候群(PMS)と呼び、その診断も特別な検査ではなくあくまで発症時期の症状によって診断されます。
ホルモンバランスの乱れで起こるのではなく、排卵が誘因となっておりむしろ正常周期のパターンの方に多いです。
以下のようなカラダとココロの変化があります。
カラダの症状
- 肌荒れ・にきび
- 下腹部が痛い・張る・重い
- 乳房が張る・痛い
- 頭が痛い・重い・めまい
- むくみ
- 疲れやすい・だるい
- 眠い
- 肩こり・首こり
- 手足が冷える
- 食欲が減る・増す
- 便秘・下痢
- アレルギーが出る
ココロの症状
- イライラする
- 怒りっぽくなる
- 憂うつ
- 気分が落ち込む
- 不安
- 集中できない
- 興奮しやすい
- 悲しくなる
現代の女性の70%が上記の症状を感じており、その症状によって仕事を辞めたり、辞めようと悩んだりしたことがある人は58%にも及んでいます。(2021年9月大塚製薬調べ)
PMS の治療について
日本ではPMS に対する保険適用の薬は利尿薬だけです。しかし、最近の社会状況からおよそ30%の女性が治療の必要性を有することも明らかになっています。
現実的な対処法については婦人科的プランニングが「カギ」となりますので、当院にもPMSを訴えて来られる方も増えています。
- 低用量ピル
かなり以前より欧米の医療概念として黄体ホルモンの成分がドロスピレノンである低用量ピル(ヤーズ・ドロエチ)がPMSを最も改善することが確認されていますので、これがファーストラインとなります。また、男性ホルモンを抑える作用から肌荒れ・にきびの改善やむくみをとる作用もあり、当院でも第一選択と考えています。ただし、低用量ピル(ホルモンの薬)を飲みたくない方や合わない方もおられますので、その他の治療法もあります。 - 漢方療法
PMSは「血」の異常とされており、それを改善する「駆瘀血薬」として、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、加味逍遙散、抑肝散加陳皮半夏を症状や体質に応じて処方しています。 - プラセンタ療法
- エクオール(エクエル)やビタミンE(γ-トコフェロール)などのサプリメント
- 生活習慣として十分な睡眠・適度な運動
月経の周期の異常(生理不順)
生理の周期は生理が始まった日から次の生理の開始前日までの日数です。正常期間は25~38日で変動が6日以内です。
「生理が遅れていることが多い」「二か月ほど来ていない」「最初の生理からバラバラな感じ」「最近遅れることが多い」「二、三か月来ていないけど痛みはないし..」などご自身ではそれほど問題があると思っていない方も多いでしょう。
生理不順の原因として以下の病気や状態がありますのでそれぞれに適した治療をしていくことが大切です。
生理不順の原因
- ストレスや心身の過労・睡眠不足
- 自己流の食事制限(ダイエット)・太りすぎなどで栄養バランスが崩れた食生活
- 激しいスポーツをしている(アスリートなど)
- 30代後半(38~45歳)から更年期障害に似た症状(プレ更年期)
- 甲状腺機能異常
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
排卵が起こりにくく、放置すると妊娠成立がしにくい病気です。
生殖年齢の女性(13歳~45歳)の約10%にその傾向があり、女性のライフステージにおいて治療をしなければ特有の症状が出ます。
症状
- 生理の周期が長く、38日以上
3~4ヵ月来ないこともあります - 無排卵性の周期
- 放置すると不妊症
- 男性ホルモン(アンドロゲン)が高いことによるにきび・肌荒れ、多毛
診断
- 生理の周期が長い
- エコー検査で両側の卵巣に多くの嚢胞(のうほう)が観察される
- 血液検査で男性ホルモン(アンドロゲン)が高値
下垂体のホルモンであるLH高値、FSH正常
上記三つから確実に診断できます。
治療法
妊娠希望の有無によって治療方法は全く違います。
さしあたって妊娠希望がない場合は、低用量ピルや黄体ホルモンを用いて生理の周期を正常リズムにします。
そして、妊娠を考えるようになれば、服用をやめ排卵を誘発するクロミッドに変えていくことが治療の指針となります。
PCOSも肌荒れやにきびの症状を伴いますので、黄体ホルモンがドロスピレノンである低用量ピル(ヤーズ・ドロエチ)がファーストラインとなります。
長期的には生理周期の異常が加齢とともに軽快していくことがありますので、一年ごとのエコー検査と血液検査で確認していくことが大切です。
月経困難症(生理痛)
生理期間に生理に伴う日常生活の支障を月経困難症といいます。その症状は生理のある女性の30%に見られ、以下の順に多いことも分かっています。
- 下腹部痛
- 腰痛
- お腹が張る
- 吐き気
- 頭痛
- 疲労・脱力感
- 食欲不振
- イライラ
- 下痢
- 憂うつ
生理痛の原因とタイプ
機能性月経困難症 |
器質性月経困難症 |
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原因 |
原因となる病気がない |
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割合 |
75% |
25% |
発症時期 |
初経から2~3年 |
30歳以降から増加 |
機能性でも将来的に器質性に移行するケースは増えてきます。
2017年、15~49歳の女性40000人に対して、生理に対する一般女性の意識に関するアンケート調査が行われ、50%以上の女性が「生理は仕事・学業・家事・外出の予定などに影響を及ぼしている」と回答しています。
生理痛は、「病気ではなく生理現象」だと我慢している人や、「ホルモンの薬は体に悪い」と誤解している人も多く、日本では医療機関で治療を受けている人は約55万人(約6%)にとどまっています。
現代の女性は、生涯において妊娠・出産・授乳の期間が激減している(合計特殊出生率1.20・2023年)ため、生理回数は生涯450~500回とかなり多くなっています。
女性のライフステージにおいて、生理回数の過多自体がこれまでの生理現象とは概念的に隔たりがあります。
治療について
機能性の月経困難症に対してはまず鎮痛剤(痛みの原因物質を抑える薬)で約80%に効果が見られます。
そして可能であれば同時に器質的病気(子宮筋腫・子宮内膜症・子宮腺筋症)の有無をエコー検査で調べます。
鎮痛剤が効かないケース(約20%)や痛み以外の症状には低用量ピル(ヤーズ・ドロエチ)によりほぼ症状は改善されます。
子宮内膜症・子宮腺筋症による月経困難症には黄体ホルモン製剤(ジェノゲスト 0.5mg・1mg)の連続投与や低用量ピル(ヤーズ・ドロエチ)の連続投与(二か月ごとの生理周期)でほとんどは改善できます。
妊娠出産の希望がなければ、連続投与により生理の量・生理の回数を減らすことは生理的現象において問題はなく、原因となる病気に対する治療効果も高いことが分かっています。
診察について
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